堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
唸るように言った世良が、拳でドン、とテーブルを叩く。感情をむき出しにしたその態度から、俺はもしやと思って彼に尋ねる。
「違っていたらすみません。でももしかして、あなたは瑠璃のことを……?」
「……だとしたら、どうする?」
俺はその問いかけに戸惑った。婚約者なら「ふざけないでくれ」と怒るところなのだろうが、今の俺に彼女の婚約者を名乗る資格などあるのだろうか? 彼女のことをなにもかも忘れてしまった俺に……。
「もしかしたら……俺のそばに居続けるより……あなたのように、きちんと自分を想ってくれる相手と一緒になった方が、瑠璃は幸せになれるんじゃ――」
彼女の方を向いて、思わずそう呟いた時だった。突然世良に胸ぐらを掴まれて、顔を思い切り殴られた。
俺の体は椅子ごと床に倒れ、ガタン!と派手な音がした。口の中が切れたのか、不快な鉄の味を舌に感じる。
「志門さん……!」
倒れた俺に瑠璃が駆け寄り、助け起こしてくれた。どうして彼女はそうまで健気に俺に尽くしてくれるのだろう……。その優しさに胸が締め付けられるのと同時に、ますます自分が不甲斐なく思える。