堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

 ちらりと瑠璃の表情を窺うと、真っ赤な顔で俯いている。俺たちふたりの顔を見比べ、この場に流れる微妙な空気を読んだ上尾さんは、申し訳なさそうに言う。

「ごめんなさい、お邪魔しました~」

 そしてまたドアを閉めようとしたが、瑠璃が慌てて彼女を引き留める。

「べ、別に邪魔なんかじゃないです……!」
「あらそう? 瑠璃ちゃんがそう言うならいいけど……。はいこれ。世良さんが渡してこいって」

 彼女が気を取り直したように、瑠璃の手にケーキの箱を渡す。

「ありがとうございます。世良さん、怒ってたのに……」
「自分で渡せばいいのに、まったくどこまで不器用なんだかね。瑠璃ちゃんの大事な旦那様を殴ってしまったって、今厨房でひとり頭を抱えて反省してるわ」

 上尾さんはやれやれといった感じで苦笑し、それから不意に、俺に声を掛けた。

「京極さん、でしたよね?」
「……ええ」
「さっき瑠璃ちゃんにキスしたくなったの、きっと本能ですよ。頭では彼女を思い出せなくても、心が彼女を求めてる。そのギャップに今は戸惑っているのかもしれないけど、頭で難しく考えすぎるより、心が叫んでる声に耳を傾けたら、案外うまくいくかもしれませんよ」

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