堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
彼女には、さっきの俺の動揺が完全にばれていたらしい。なんともばつが悪いが、彼女の語った持論はなかなか興味深かった。心の声に耳を傾けろ、か……。
「ありがとうございます。今夜はゆっくり、瑠璃と向き合おうと思います」
「それがいいわ。ふたりとも、素敵なクリスマスをね」
上尾さんに優しく見送られ、俺たちは店を後にした。近くのパーキングに停めていた車の中はすっかり冷え切っていたので、急いでエンジンをかける。
しかしすぐには暖まらず、隣で小さく震えた瑠璃の手に、そっと自分の手を重ねる。
「志門さん?」
戸惑ったように俺を見る瑠璃に、俺は上尾さんの言葉を借りて伝えた。
「心の声に耳を傾けた結果、かな。隣で瑠璃が寒がっている時、前の俺ならどうしたのかはわからないけど……ただ温めてやりたいって、そう思って」
その気持ちが、記憶を失ったことに対する罪滅ぼしなのか、彼女に対する同情なのか、はたまたそれ以外なのかは自分でもわからない。
でも、そういうことを頭で考えすぎるなと、上尾さんは言っていたのだ。もちろん、瑠璃の意思は確認しなくてはならないが。