堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
俺の脳裏に、Elisaの休憩室でのワンシーンが蘇る。
『もしかしたら……俺のそばに居続けるより……あなたのように、きちんと自分を想ってくれる相手と一緒になった方が、彼女は幸せになれるんじゃ――』
心から瑠璃を想い、本気で心配していた世良の姿に劣等感を覚え、つい口にしてしまったあの弱気な発言を、撤回させてほしい。
本当は瑠璃にそう伝えようとしたのだが、すんでのところで踏ん切りがつかず、俺は結局「いや、なんでもない」と誤魔化した。
彼女は不思議そうに首を傾げたが、やがて対面式のキッチンに立ち、夕食の準備に取り掛かった。俺は一旦気分を切り替えて立ち上がり、彼女のそばまで行って尋ねる。
「なにか手伝うことはある?」
「ええと……じゃあ、お米を研いで、ざるに上げておいてもらえます?」
「了解」
今から作るとなるとあまり時間がないので、一品でも華やかに見えるパエリアを作ってスープでも添えれば、ケーキもあるし立派なクリスマスメニューになるだろうと、買い物をしている時にふたりで決めた。
我が家にパエリア専用の鍋はないが、料理に自信のある瑠璃によると、フライパンで代用できるのだそうだ。
米を洗う俺の隣では、瑠璃が鶏肉、車海老、白身魚をひと口大に切り、塩コショウで下味をつけている。その真剣な横顔が凛々しい。