堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「あの……あまり見ないでもらえますか? 手元が狂いそうなので」
「ああ、ごめん」
すぐさまパッと目を逸らして自分の作業に集中すると、今度は瑠璃の方が俺をジッと見ているのに気づき、首を傾げる。
「俺、なにか間違ってる?」
「いえ、そうじゃなくて……。以前の志門さんは、見ないでと言ったらますます見つめてくる意地悪な人だったので、今の志門さんがなんだか新鮮で」
決して悲しげなわけでなく、この状況を楽しんでいるかのような瑠璃の口ぶりに、俺も必要以上に悲観的になることなく、笑って返す。
「本当は見つめてほしかった?」
「うーん……どっちだろう。でも今の、付き合いたてでお互い探り合ってるような照れくさい感じも、悪くないなって思います」
そう言って笑いかけてくれる瑠璃の明るさがありがたい反面、無理をさせているようで胸が痛くなる。
本心では、早く私を思い出して、今までのように愛してと思っているに違いないのに……俺を気遣って、わざと平気な顔をしているのだろう。
年は十も下だが、俺なんかよりずっと優しくて芯が強い。……過去の俺は、彼女のそんなところに惹かれたのかもしれないな。