堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
9*やっと、見つけた
志門さんが、私に一から恋をし直すと決めてくれてからは、平穏な日々だった。
彼は入院して仕事を休んでいたこともあり、年末までは多忙だったけれど、二十八日の土曜日から翌年五日までは長いお休みをもらうことができた。
ずっと心配していたElisaの客足も、クリスマス後から少しずつ回復し、あと少しで通常通りの賑わいを取り戻しそうなところ。
私も無理をしない程度に仕事に入り、段々と大きくなってきたお腹に気づいた常連さんに『あら、おめでた?』と声を掛けてもらったりと、忙しい中でも楽しく働いていた。
「ほら見ろ、真摯に美味しい菓子を作っていれば、噂なんて勝手に消えるんだ」
大晦日と元日はElisaもお休みになるので、三十日の今日は今年最後の勤務。すっかり活気を取り戻した店内で、ケーキを補充しに来た世良さんが、カウンターに立つ私と上尾さんに得意げに言った。
「いくらドヤッても、恋には敗れましたけどね」
「……それを言うな。こう見えてまだ立ち直ってないんだから」
すかさず上尾さんに突っ込まれた世良さんは、肩を落としてすごすごと厨房に戻っていった。
私のせいだよね、と申し訳なく思いつつその姿を見送っていると、上尾さんが私の顔を覗く。