堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
そこで早めの昼休憩をとっていたのは、パートで働く上尾さんだった。ふたりの子どもを持つ三十代のママで、優しいけれどサバサバしている、カッコいい女性。
さらに私と違ってすらりと背が高く、潔いショートヘアがよく似合う小顔。七分袖のワイシャツにベージュのショートエプロンというシンプルな制服も、彼女にはよく似合う。
Elisaは小さな店なので、基本的に上尾さんと私と、それからオーナーパティシエの世良直輝さんの三人で店をまわしている。
上尾さんと世良さんは同じ三十代前半なので、私ひとりが妹分のような立ち位置だ。
しかし私が大学の試験中で忙しかったり、上尾さんのお子さんが熱を出したりすると世良さんがひとりで店に立たなければならない。おそらくそれが大変なのもあって、世良さんは私を就職させてくれる気になっているのだと思う。
「どうだった? 念願のウィーンは」
上尾さんに聞かれて、私は空いている椅子に腰を下ろしながら、家族に伝えたのと同様、建前の感想を報告する。