堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

「想像以上に素敵なところでした~。ザッハートルテも最高でしたよ」
「いいなぁ……! 私、海外は新婚旅行のハワイしか行ったことないから、旦那と老後にでも絶対行こう」
「あはは、老後って」
「いやホント、今はお金と時間がないし、もしあっても子連れだって考えただけで疲れるんだもん」

 休憩室のテーブルに突っ伏して、上尾さんがため息を吐く。上尾さんのお子さんは、現在五歳と二歳。好奇心旺盛で、あちこち行きたがる年齢なんだろうな。

「毎日がんばってる上尾さんの癒しになればと、お土産はオーガニックティーとジャムのセットにしました。よかったら」

 手に持っていたふたつの紙袋のうちひとつをテーブルに置くと、上尾さんがガバッと身を起こして破顔する。

「ありがと~、やだこれなんか高そう! いいの? もらっちゃって」
「もちろんですよ。お店休んで迷惑かけましたし、いつも上尾さんにはお世話になってますから」

 大学に入ってすぐに始めたここでのバイトが思った以上に長続きしたのは、ひとえに上尾さんの人柄のおかげだ。

 世良さんもいい人には違いないけれど、無口で若干なにを考えているかわかりづらいため、私に仕事を教えてくれたのはほとんど上尾さんなのだ。

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