堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「こちらこそだよ~。あっ、世良さんにもお土産渡すよね? 私、ちょっと店番変わってくるから待ってて」
「あっ、いえ。後で上尾さんから渡していただければ……」
「いやいや、会ってってあげて? 世良さん、瑠璃ちゃんいない間寂しそうだったんだから~」
上尾さんはそう言い残し、休憩室を出ていってしまう。
世良さんが寂しそうだった? ……そんなはずはない。なにしろあの人はいつだって同じ無愛想な表情をしているのだ。
決して冷たいわけではなく人に気遣いのできる性格だし、作るケーキはめちゃくちゃ美味しい。だけど、勤め始めて四年目になった今でも、私は彼の喜怒哀楽を見たことがない。
そんな世良さんに面と向かってお土産を渡すのは、変に緊張するなぁ。
お土産の入った紙袋の紐を弄りながら、なんとなく身構えていたその時だった。ガチャリと休憩室のドアが開き、世良さんがやってきた。
白のコックシャツに、私や上尾さんのものより丈の長いベージュのエプロン。清潔感のあるツーブロックのショートヘアが、武骨で男らしい顔立ちをさらに引き立てている。
ガタイもいいし、見た目だけだったら、パティシエより建築現場などの力仕事が似合いそうな感じだ。