堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

 もしかしたら、私へのお礼……だろうか。

 実は私は昨日、ひょんなことから彼を助けたのだ。といっても、実際は助けようとして失敗したのだけれど……その気持ちがうれしいよと、彼はおおげさに感謝していた。

 ……いや、でも。別に理由なんて、ないのかもしれない。暇つぶし、とか。ただ欲求を満たすための相手を探していて、たまたまそばにいたのが私だった、とか。

 うん……そっちのほうが、しっくりくる。

 だって、彼はうんと年上で、有名企業の副社長。私に惹かれる理由なんて一切ない。こうして朝を迎えるまでは、運命なんてものの存在を信じ、舞い上がっていたけれど……。

「なんだ……ふふっ。遊ばれちゃった……」

 自虐を笑いに変えようとして、失敗した。貼り付けた笑顔はすぐに歪んで、泣き顔に変わる。私は自分を慰めるように、シーツを巻き付けた体をぎゅっと抱きしめた。

 幸い、今回の旅行はひとり旅だ。彼と私以外、誰も昨夜の逢瀬について知る人はいない。日本に帰ったら、普通の顔をして、平凡な日常に戻ればいいのだ。

 何度自分に言い聞かせても、胸の痛みは激しくなるばかり。
 
 同時に、嫌でも反芻してしまう。

 昨日の志門さんとの出会い。それから彼と過ごした、あまりにロマンティックな一日のことを――。

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