堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
その日は平日で、大学で授業を受けた後、十五時から四時間勤務だったけれど、三十分と経たずに私の体調は悪化した。
マスクをしていても、店内に並ぶ様々なお菓子の匂いが鼻腔に入ってきて、気分が悪くなる。その上ずっと立ち仕事なので、ときどきくらっと目眩に襲われては足を踏ん張る、その繰り返し。
そんな調子できちんとした接客ができるはずもないが、上尾さんはお休みだし、世良さんは十六時まで休憩中。
そうでなくても、復帰した初日でまた早退するなんて責任感のない行動を取りたくはなくて、私は額に脂汗を浮かべながら、無理やり店に立っていた。
しかし、世良さんの休憩が明ける十六時目前。
一旦お客さんの波が落ち着いたタイミングがあり、最後のひとりが店のドアから出て行った瞬間、張りつめていたものがふっと途切れて、私の体はぐらっと傾いた。
あ、まずい。私、倒れる――。
そう思った時には目の前が真っ暗で、床に体が打ち付けられる強い痛みを感じながら、私は意識を失った。