堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
3*再会と思いがけない贈り物――side志門
《副社長、お電話です。ウィーンのお祖母さまから》
「……あれほど会社にかけるなと言っているのに。わかった」
秘書室からの内線にそう答えると、電話が外線に切り替わる。そしてすぐさま、祖母の甲高い声が聞こえてきた。
《シモン! あれからどうなったの? 連絡がないから心配するじゃない! 顔合わせは? ユイノウは? 式の日取りは?》
ものすごい剣幕でまくし立てられ、うんざりしながら適当に答える。
「そんなにすぐ決まるはずがないだろう。彼女は学生だ。きちんと報告できる段階になったら連絡するから、お祖母さまは待っていてくれ」
《もう! あなたのために舞踏会を計画したのは私なのよ!?》
「もちろん感謝しているよ。じゃ、これから出かける用事があるから切るよ」
祖母が納得できないような声でまだなにか言っているのが聞こえていたが、俺は構わず受話器を置いた。それから頭を抱えてデスクに肘を突き、深いため息を吐く。
「報告するようなことなどないのに……。俺は振られたんだよ、お祖母さま」
自嘲気味に呟くと、立ち上がって窓辺に近づいた。眼下に広がる東京のビル群が、〝早く現実に戻れ〟と俺に語りかけてくる。