堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
わかっている。ウィーンから帰国してひと月が経っても彼女から連絡がないということは、彼女は俺に興味がないのだと。
彼女は華やかな大学生活に戻り、アルバイトにいそしみ、同世代の男と恋をして、ますます美しく輝いていくのだ。
いくら頭で理解しようとしても、時間が経つにつれ切ない想いは膨らんだ。俺はあの短い間で、十も年下の瑠璃に、すっかり心奪われてしまっていたのだ。
彼女に会いたいがために、洋菓子店の前を通りかかると、中を覗いて店員の姿をつい確認してしまう。
誰も東京の店だとは言っていないのに……。まるで片思い中の高校生のようだ。
どうして連絡先を交換しておかなかったのかと、何度悔やんだことだろう。
しかしあの夜は、恋愛の順序など考えていられないくらい、彼女が欲しかった。その衝動のまま、彼女を抱いたことにも後悔はない。
あの時すでに俺は〝結婚するなら彼女しかいない〟と勝手に心に決めていたから。