堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
しかし、そこまで強い気持ちを抱いていたのは俺だけだった……。
女性に失恋してここまで強い喪失感を覚えるのは、三十一年間生きてきて初めてだ。この傷が癒えるのには、まだ時間がかかるのだろう。
俺の結婚相手を世話したくてあのように豪華な仮面舞踏会を開いてくれた祖父母には悪いが、俺が結婚したいと思うのは、後にも先にも瑠璃だけ。
奇しくも、あの舞踏会のせいで俺は一生独身を貫くことが決まったわけだ。
センチメンタルな思いに浸っているうちに、国土交通省の職員との会談の時間になり俺は秘書を連れて社を出た。
秘書課の人員は大半が女性だが、俺の専属は切れ者の男性秘書・押尾。
押尾は時に副社長の俺に平気で盾突いてくる無礼な男ではあるが、俺が難しい経営判断を迫られ慎重になりすぎる際など、的確な意見で背中を押してくれたりするので、秘書であり参謀役でもある貴重な存在である。
ちなみに、四六時中一緒に行動することの多い彼にはプライベートの話を聞かせることもしばしばだ。