堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

「また祖母から電話があったよ。舞踏会に出てやったのだからあとは黙って見守ってくれればいいものを、結納だ顔合わせだと、気が早いにも程がある」

 国交省に向かう社用車の後部座席でタブレットを操作しながら、運転席でハンドルを握る押尾につい愚痴をこぼす。押尾はバックミラーでちらりと俺を一瞥し、苦笑した。

「舞踏会直後、副社長が『運命の相手に出会った!』と息巻いていたからじゃないですか?」
「……俺はそんなに舞い上がっていたか?」
「ええ。僕にも散々聞かせたじゃないですか。その大学生の瑠璃さんって方が、いかに思いやりのある女性で、かつ天使のようにかわいくて、今すぐにでも結婚したいほどだと。僕としては驚いたんですから。紳士的で博愛主義者の副社長が、ひとりの女性にそこまで熱を上げるなんて」

 押尾はそう言うが、俺は別に博愛主義なわけではない。

 昔から女性には優しくするものだと教育されてきたから自然と紳士的な動作が身についただけで、すべての女性に愛を持って優しく接しているわけではないのだ。

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