堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
廊下から大きな足音が聞こえてくると思ったら、処置室の扉が勢いよく開いた。パッと振り向くと、ひとりの若い男性が悲痛な面持ちで瑠璃を見つめている。
「瑠璃……! 大丈夫か!?」
「お兄ちゃん……!」
そうか、瑠璃はお兄さんがいると言っていたな……。病院から連絡を受けて駆け付けたのだろう。挨拶するために椅子から立ち上がる俺に、彼女の兄は怪訝な眼差しを向ける。
「……どちらさまですか?」
「はじめまして。京極志門と申します。瑠璃さんと、結婚を前提にお付き合いしています」
「そうでしたか、どうもご丁寧に。瑠璃の兄の神谷浩介です……って。けっ、けけ結婚!?」
浩介さんは俺に頭を下げかけたが、突然のことに驚いて顔を上げ、目を剥いて俺を凝視した。
まぁ当然の反応だろう。結婚を申し込んだのはつい先刻のことだ。そうでなくても瑠璃はまだ若い学生で、家族にとって彼女の結婚は、もっと先の未来に思い描いていたものに違いない。
「驚かせてしまってすみません。しかし、今瑠璃は僕の子を妊――」
「ちょ、ちょっと待ってください志門さん!」