堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
志門さんは、そんなことをする人ではない。そう反論したいけれど、彼の人間性を語るには、まだまだ私と志門さんの歴史は浅い。兄を説き伏せられそうな言葉は浮かばず、私はただ唇を噛む。
「とにかく、俺は認めないからな。アイツと結婚するっていうなら、兄妹の縁を切る」
「お兄ちゃん……!」
兄は私の呼びかけを振り切るようにして、どすどすと廊下へ出ていった。
キッチンで肩を落とす私に、母がダイニングからそっと声を掛ける。
「瑠璃、大丈夫よ。浩介、突然で心の整理がつかないだけだと思うわ。瑠璃は、赤ちゃんのことを一番に考えてあげて?」
「お母さん……」
そうだよね。突然すぎる話だもの……すぐに受け入れろという方が無理な話かもしれない。お兄ちゃんは優しい人だから、きっと最後にはわかってくれる。
私はこくんと頷いて、とりあえずお風呂に入ろうと、着替えを取りに二階の自室へ向かった。
着替えを持って部屋を出る直前、ベッドに置きっぱなしになっていたスマホをなにげなく手に取ると、志門さんからメッセージが届いていた。病院を出る前に、連絡先を交換していたのだ。