愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
「岩武さん、でしたっけ?」


「はい。」


「初めてのデザイン、お疲れ様でした。」


「ありがとうございます。」


「可愛いデザインだね。だけど・・・ノーマルだよね。」


「えっ?」


「ノーマルというか、無難って感じ。可もなく不可もなくって感じだよね。」


そう決めつけられて、私が言葉を失ってると


「ちょっと玲。さっきから、あんたケンカ売ってるの?」


と陽菜さんが声を荒げる。


「マルはそんなふうにしかとれないの?私は素直な感想を述べてるだけなんだけど。」


「ちょっと、いい加減にしろ。」


井上さんがそう言い返したところで、たまりかねたように、チーフバイヤーが割って入った。


「井上くん、いかに系列会社とは言え、相手はお取引先だぞ。少し慎みたまえ。」


「・・・はい、すみませんでした。」


上長にたしなめられて、井上さんはこちらに頭を下げて来る。


「いえ、こちらも言葉が過ぎました。申し訳ございませんでした。」


こちらも平賀さんがそう言って頭を下げ、陽菜さんも慌てて、それにならった。


「とにかく、私の見る限り、そんなに問題のある商品とは思えません。気になる所はありますが、それはあとで私から平賀さんにお伝えしますから、そこを手直ししていただいて、正式に生産に入りましょう。」


「わかりました、ありがとうございます。」


チーフバイヤーの言葉を受けて、平賀さんが正式採用決定のお礼を述べて、異例の雰囲気になってしまった商談は幕を閉じた。退出する時、私は井上さんと目があった。会釈すると、それまで厳しい表情だった井上さんが、ニコリと微笑んでくれた。その笑顔が年上の方に失礼だけど、なんとも可愛くて、私は先ほどまでの彼女とのギャップに戸惑ってしまった。


「由夏、ゴメンね。初めての商談があんな雰囲気になっちゃって。」


「いえ、陽菜さんのせいじゃありませんよ。でも、ちょっとビックリしました。」


オフィスに戻りながら、陽菜さんに謝られて、私は首を振る。


「あの子、昔っから、何か一言言いたがるタイプだから。」


「井上さんとはお知り合いだったんですか?」


「うん、同期なんだ。私達が入った頃はまだ、会社同じだったから。」


そうか、だから途中からタメ口になっちゃってたんだ。


「あの子は入社した時から上昇志向が強くて、でもずっとショップで苦労してた。その実績が認められて、今回の人事でバイヤーに抜擢されて。張り切ってるんだと思う。根は悪い子じゃないんだけど、難しいところがあって。だから許してやって。」


「はい、大丈夫です。」


「とにもかくにも、商品化はこれで決定した。岩武、よかったな。」


「ありがとうございます。」


平賀さんからの祝福に、そう答えた私は


(いよいよ私のデザインした商品が、お店に並ぶことになった・・・。)


喜びを全身で感じると同時に、身の引き締まる思いも感じていた。
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