愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
自分のデザインの商品化が決定した。由夏が本当に嬉しそうに、得意そうにそう報告して来た時


「よかったじゃねぇか。」


と俺は心から祝福した。


『どのくらいの枚数を生産するのかは、6月の展示会の反応で最終的に決まるんだけど、とにかくデザイナーとしての第一歩は踏み出せたよ、これで。』


そう明るい声で言う彼女。そのあとも話は弾み、いろんな話をした。


じゃ、また。そう言って電話を切った時には、話し始めてから優に1時間以上が過ぎていた。


楽しい時間だった。だけど、電話を切った後、俺はフッとため息をついた。


別に長電話にうんざりしてるんじゃない。遠恋中の電話というのは、し過ぎても、しな過ぎてもよくないそうだから、俺達は基本週1回。あとはLINEでということにしている。由夏の声を聞くのは、本当に楽しみだ。


まして、あいつの仕事は順調らしい。恋人の明るい、弾んだ声を聞いて、嬉しくないはずがない。


だが、それに引き換え・・・と思ってしまう自分がいる。そう俺は順調じゃなかった。


オフのトレーニング不足が祟り、右肘痛を発症し、キャンプ途中で温暖な沖縄から、寒気がまだまだ肌を突き刺すような仙台に強制送還された俺。


患部を休ませることが治療の最優先となり、結局ランニングを中心とした下半身の強化に、当面は努める他はなくなってしまった。


打撃練習には支障がないが、守備練習はボールは捕れても、送球することができない。


そうこうしているうちに2月が過ぎ、3月に入ってもなかなか患部の状態は上がって来ない。


野球選手にケガが付き物なのは確かだが、しかし特にピッチャーとしては致命傷になりかねない肘や肩のケガには、今まで無縁で来ただけに、不安は大きかった。


(俺は何をしてるんだ。)


気持ちは焦るが、しかしどうしようもなかった。
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