愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
東京に戻ってからは、すぐに本社との秋冬物の最終打ち合わせ。


例によって、陽菜さんと井上さんのバトルにヒヤヒヤしながら、同席する。


2人共


「私達は、個人的には何もないからね。あくまで仕事で、やり合っているだけだから。」


と口を揃えるけど、正直、本当かなぁと思ってしまう。


「マルは危機感が足りないなぁ。」


打ち合わせの後で、社食で顔を合わせた井上さんは、ため息混じりに私に言った。


「そうでしょうか?私は、陽菜さんは凄くいろいろ考えてらっしゃると思います。」


私はそう反論してみたけど


「岩武さんの立場じゃ、マルに批判的なことを言えないのはわかるけど、でもお宅のボスも、私と同意見だよ。」


「えっ?」


その言葉に、私が驚いて聞き返すと、井上さんは、ハッとしたように


「あ、あくまで、そうなんじゃないかって言う私の推測だから。気にしないで。」


普段、陽菜さんとやりあってても、冷静な態度を崩さない井上さんが、珍しく慌てた様子を見せたことが気になったけど、私はそれ以上、その話題を深追いしなかった。


それから数日後、Eの春季キャンプの一、二軍の振り分けが発表されて、聡志は3年目にして、初めて二軍スタートとなった。


心配して、電話をした私に


『そりゃ、一軍でスタート出来れば、それに越したことはないけど、それがその後の何の保証にもならないことは、過去2年で痛感しているからな。大丈夫、ここから這い上がって行くだけだよ。』


と、力強く答えた聡志は


『少なくても、キャンプ途中で仙台に強制送還されるような無様な真似だけは、絶対にしないから。ま、見ててくれ。』


と言って、笑った。
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