愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
GWの後半は、ウチの二軍は、地元に腰を落ち着けるのが通例。それが分かっていた由夏は、今回は、早めに新幹線を抑えて、3泊4日で、来てくれている。


もっとも、俺が二軍にいることを前提にして、計画が立てられ、結果その通りになってしまっている現実は悲しいものがあるんだが・・・。


でも、帰って来ると、愛しの彼女がエプロン姿で迎えてくれて


「お夕飯、もうすぐ出来るから、先にお風呂、入って来て。」


なんて言ってもらって、湯船に浸かって、ゆっくり疲れを癒やして、出てくると


「どうせ、普段は、外食で肉ばっかり食べてるんでしょ?今日はヘルシーに、バランス良く食べてもらうからね。」


でも、テーブルにはちゃんと、俺の好物がいくつも並んでいる。


「いただきます。」


そして、相向かいに座って、一緒に食べ始める夕食。


趣味は料理と公言して憚らない由夏の作る飯は、とにかく一言で言ってうまい。だから


「せっかく作ったんだから、たくさん食べてよ。」


なんて言葉は、わざわざ言ってもらわなくても、全く問題ない。


きれいに畳まれた洗濯物、掃除機がキッチリ掛けられた部屋・・・むさ苦しい典型的な男の一人暮らしの部屋が、今日1日で、昨日までとは、全くその装いを異にしている。


そしてなにより、違うのは、そこに女性が、愛する人が居てくれること。


食事が終わり、面倒くさいはずの後片付けを、鼻歌を歌いながらこなしてくれている、その後ろ姿を眺めていると


(幸せだな。)


とつくづく思う。


昨日の午後にこっちに着いてから、今日1日。由夏は食材などの必需品の買い出しに出た以外、ずっとこの部屋にいるはずだ。


俺は試合や練習があって、どこかに連れてってやることも出来ない。はっきり言って、神奈川から家政婦をしに来てるようなもんだ。


申し訳ないなと思うが


「聡志みたいな家事能力ゼロの男と付き合ってる時点で、そんなの覚悟出来てるし、好きな人に会いたくて、少しでも一緒の時間を過ごしたくて、来てるんだから。そんなふうに思うこと自体、聡志が私のこと、家政婦だと思ってる証拠だよ。」


と笑いながらも、たしなめられて


「ゴメン。」


とまた謝らなければならなくなってしまった。
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