愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
今年のGWは、3泊4日で聡志の所で過ごした。まるで、新婚生活の予行練習のような、楽しくて幸せな時間だった。


でも、その帰り道、私の心は重かった。聡志と一緒の時間が終わってしまったことが1番の原因だったけど、明日からまた始まる仕事のことが、私を憂鬱にさせていた。


長い休みが終わるときに、憂鬱な気分になるのは、多くの人が体験することだろうけど、私の職場の環境は、4月の年度替わりから、一転してしまった。


陽菜さんが去った次の日、出社した私は、全く何事もなかったかのような社の雰囲気に、強烈な違和感を持った。


平賀さんの朝礼での話もいつものような感じのものだったし、その後、岡嶋さん、並木さんとの3人での初ミーティングでも、冒頭に岡嶋さんが


「今日から新体制だから、よろしく。」


と一言言っただけで、あとはすぐに本題に入って行った。


「由夏が入ってからは、割と安定してたけど、この業界はもともと入れ替わりの激しいとこだからね。由夏は陽菜に可愛がられてたし、思うところがあっても仕方ないけど、人の出入りがあったくらいで、企業はいちいち動揺なんかしてられないよ。」


昼休み、並木さんにそんなことを言われた。自分がいなくても会社が何事もなく動いている姿に、ショックを受けた会社員の話なんかは、聞いたことあるし、それが現実なんだろうけど、でも私の心の中のわだかまりは、消えなかった。


春物の動きは、芳しくなかった。陽菜さんがデザインした商品だけじゃなく、全体的に苦戦している。本社のウチの会社に対する風当たりは、ますます厳しくなって来ている。


その矢面に立たされてる平賀さんの苦労は、察せないわけじゃないけど、余裕がなくなり、各デザイナーに厳しい言葉を投げつける平賀さんは、私が尊敬していた彼とは、もはや別人だった。


社内の空気は、悪くなる一方で


「私達が入社した頃の、あのノンビリとしてはいたけど、みんなが1つになって仕事に取り組んでいた、あの雰囲気は、一体どこ行っちゃったんだろうね。」


「そうだよね。」


ある日のアフター5で、そんな愚痴を言い合っていた私と美優の横から


「でも、由夏さん達が入社されたのって、まだ2年前ですよね。そんな急に、会社の雰囲気悪くなっちゃったんですか?」


と聞いて来る新入社員の希に、思わず言葉を失ってしまった。
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