愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
仙台では、随分聡志に甘えてしまったのは、自分でも自覚している。離れ離れが長くなった恋人との時間が、とにかく嬉しかったのはもちろんだけど、会社のゴタゴタを忘れたいという気持ちも大きかった。


仕事が再開され、私達は当面、来月の展示会に向けて、動かなければならなかった。そして本格的なシーズンを迎える夏物の動向にも、関心を払いながら。そうした状況で、私の中で高まって行ったのは、新しい上司になった岡嶋さんに対する不信感だった。


陽菜さんの辞令が出た時は、怒りまくっていた岡嶋さんも、自分が陽菜さんの後任を兼ねるという、いわば昇格人事が提示されると、掌を反すように態度を変えた。私は会社に買われているのだ、彼女の自尊心が満足したのだろう。


なんだよという思いは抱いたけど、それも仕方ないかと、胸に納めて、私は彼女の下に付いた。陽菜さんより経験も積んでいるベテランの岡嶋さんから得られるものも多いだろうと、期待する部分もあった。


ところが、いざ一緒に仕事をしてみると、ご自分の仕事や実績に、やたらプライドをお持ちではあったが、そのおっしゃる内容に、中身はあまりなく、デザイナ-としてのセンス、感覚も失礼ながら、2周遅れの所を走ってらっしゃるんじゃないかと、何度も思わされることがあった。


更に面倒なことは、みんな下に丸投げで、その辺も陽菜さんとは大違いだった。


「あの人は、ずっとあんな感じだよ。陽菜の辞令聞いた時、それは対象者が違うんじゃないのって、正直思ったもん。あんたはもちろん、新人でいきなりあの人の下に付けられた希にも、深く同情するよ。とにかく平賀さんは人を見る目が無さずぎ。」


岡嶋さんとは長い並木さんは、ため息交じりに話してくれた。もう半分投げている口調だった。


陰では「平賀、平賀」と呼び捨て、見下した態度を取ってるくせに、面と向かっては、逆らっては損と考えているのだろう。下手に出て、ヘコヘコしている様子には、嫌悪感すら覚えた。


夏物の動向もいま一つで推移している。陽菜さんの置き土産のような形になった女子ヤンカジュは、皮肉にも私のデザインした商品も含め、比較的好調だったが、その上の年代対象のアダルトは厳しかった。この人が担当してるんじゃ、さもありなんと思ってしまった。


平賀さんは、さすがに検証を厳しく指示したが、表立っては殊勝な態度で応じていたものの、部屋を出た途端


「デザイナ-落第生が、何偉そうに言ってんのよね。本社で責められた鬱憤を、そのままこっちにぶつけられても困るのよ。」


とうそぶく姿には、唖然とするしかなかった。
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