愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
それでも、俺達は、そのあと食事をしながら、いろんな話をして過ごした。その時間が決して楽しくなかったわけではなかったし、話題も結構途切れることもなかった。


だが、お互いに明日は試合があり、仕事がある。10時過ぎには、ファミレスを出て、俺は長谷川をマンションまで、送ることにした。


「なんか、ゴメンね。疲れてるのに。私、図々しかったよね。」


「そんなことねぇよ。素直に嬉しかったよ、久しぶりに長谷川に会えて、いろいろ話せて。」


「そう。なら、よかった。」


俺の答えに、長谷川はホッとした表情を見せる。だがそこから、少し会話が途切れ、しばしの沈黙が訪れる。そして、それを破ったのは長谷川だった。


「あの・・・変なこと聞いて、ゴメンね。岩武さんとは・・・順調なんだよね?」


そう言った長谷川の、探るような視線を感じながら、ハンドルを握る俺は、前を向いたまま


「ああ。」


とはっきり答えた。


「そっか、そうだよね。」


長谷川はそう言って、少し間をおいてから、また口を開いた。


「今から私の言うことが、迷惑だと思うなら、はっきり言ってね。もしよかったら・・・これからも連絡してもいいかな?」


「えっ?」


驚いて、思わず長谷川を見てしまった俺に


「変な意味じゃないの。今日会えて、私もとっても嬉しかったし、お話し出来て、楽しかった。だから・・・せっかくおんなじ街に住むことになったし、元クラスメイト、そしてEファン、塚原聡志選手のファンとして、お話しさせてもらえたら、嬉しいなって思って。」


「・・・。」


「ダメ、かな?」


そう言って、また俺を伺うように見る長谷川。また沈黙が車内を包む。やがて、カーナビが目的地、つまり長谷川の自宅に近付いて来てることを告げる。


「塚原くん。」


ちょっと緊張を含んだ長谷川の声が、俺を呼ぶ。そして、その直後に信号待ちとなり、俺は長谷川を見た。


「今日みたいに会ったりするのは、難しいけど。」


「・・・。」


「電話やLINEで話すくらいなら、構わないぜ。」


そう答えると、長谷川の顔がパァと明るくなる。


「もちろん、それで十分だよ。塚原くん、ありがとう。」


「いや、まぁ・・・。」


あまりに嬉しそうにする長谷川に、俺が戸惑っていると


「試合も見に行かせてもらうからね。とにかく、私、塚原くんを応援したいんだ。だから、よろしくね。」


と長谷川はとにかく笑顔。


「あ、ああ。こちらこそ、よろしく。」


俺はそう答えるしかなかった。
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