愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
試合後のミーティングも終わり、シャワーを浴び、球場を出ると


「塚原くん、お疲れ様。」


と満面の笑みの長谷川がお出迎え。


「お、おぅ、ありがとう。」


まさか出迎えられると思ってなかったから、戸惑いながら、返事をすると


「塚原くんのピッチング見られて、つい興奮しちゃって。ひと声掛けたくて、待ってたんだ。ゴメンね。」


なんて言うから


「別に謝らなくてもいいよ。こっちとしても嬉しいし。」


と答える。


「本当?なら、よかった。明日も見に来るから、頑張ってね。」


「ありがとう。でも無理すんなよ。」


「無理なんかしてないよ。塚原くんのプレーが間近に見られて嬉しいんだから。じゃあね。」


そう言うと、手を振って長谷川は駅に向かって歩き出して行く。その後ろ姿を見送りながら、なんとなくホッとしていると、いきなり後から肩を叩かれた。振り向くと


「お前、あんな可愛い彼女がいて、どういうことだ。」


菅沼さんだ。


「いや、あの子はその・・・。」


なぜか、しどろもどろになってる俺に


「まさか、お前の知り合いとはな。これはじっくり話を聞く必要がありそうだな。」


と言うと、菅沼さんはニヤリと笑った。


お互い、車なのでアルコールはNGということで、近くのレストランに入った俺達。そこで、俺は隠しても仕方ないので、俺と長谷川の関係と、彼女がこのところ試合をよく見に来ている経緯を素直に話した。



「そうか・・・。それにしても羨ましいな。」


「はい?」


「お前の彼女にしても、同級生にしても、お前の周りにいる女子は、みんな美人じゃねぇか。どうなってるんだ?」


いや、どうなってるんだと言われても・・・。


「じゃ、あの子はお前の浮気相手じゃねぇんだな?」


「変なこと、言わないで下さい。」


「じゃ、紹介してくれよ。」


やっぱりそう来たか、予期はしてたけど・・・。


以前、俺がルーキーの年に由夏の付き添いで、桜井がキャンプに遊びに来たことがあった。その時に、お前の彼女の友達を紹介しろと言って来たのは、誰あろう、この菅沼さんだった。


菅沼さんはその後、一軍に定着し、それなりに活躍していたのだが、今年は開幕から不調で、二軍にいる。


最近、付き合っていた彼女と別れたそうで


「人が二軍に落ちた途端に、はいサヨナラだぜ。女なんて、冷たいもんだ。お前らも注意しろよ。」


なんて、愚痴ってたのを聞いた。
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