愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
長谷川の返事を受けて、菅沼さんに連絡をすると、当然の如く大喜び。


彼女が明日の試合も見に来る予定なら、早速、そのあとにも会いたいと前のめりの発言。メッセンジャーボーイよろしく、それをまた長谷川に伝えると


『わかりました、大丈夫です。でも、最初は塚原くんも同席してくれるんだよね?』


念を押されたから、成り行き上、当然そうすべきだと思い


「ああ、もちろん。」


と答えると、電話の向こうで、ホッとしている様子が伝わって来る。その後、試合後に今日のように、球場の出口で待ってるように伝えて、電話を切った。


翌日、練習の時から、菅沼さんの張り切りようは、凄かった。もちろん、長谷川にいいとこ見せようとしてるわけで、率先して声を出し、真っ先にベンチを飛び出して行く。


一軍を外されて、ややフテ気味だった昨日までとは、まるで別人。試合でも、攻守に渡って大活躍で、女の力って、やっぱりスゲェもんだなと、自分のことを棚に上げて、思ってしまった。


試合終了後、他の観客やファンが引くのを見計らって、俺達は長谷川の待つ入口に向かった。


「初めまして、菅沼茂樹です。」


「長谷川菜摘です。」


まずは型通りの挨拶を交わした後、俺の車で近くのカフェへ移動。


そこで改めて、俺からお互いを紹介。雑談に入ったのだが、話をリードすべき俺が、こんな役回りなど初めてで、なかなかうまくやれない。気まずいというか、座が持たない空気感がありありで、菅沼さんからは、とうとうお前はもういいのサインが。


お役御免なら、かえってありがたいとばかりに席を立とうとすると、長谷川から不安そうな視線を投げかけられ、一瞬躊躇ったが


「じゃ、俺はそろそろ失礼します。後は、お二人でごゆっくり。」


果たして、去り際のこの台詞も適切だったのかは、疑問だが、これ以上は俺の手には負いかねて、その場を離れた。


車に乗り込み、帰宅の途につきながら、俺の不安はだんだんと募って行く。


(大丈夫かな・・・。)


まさか、いきなりホテルに誘うようなことはしないとは思うが、しかしこと女性関係においては、よからぬ噂が多い人だ。


(やっぱり、断るべきだったか・・・。)


今更の後悔の思いを抱きながら、俺はやきもきする時間を過ごした。
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