愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
受け取った携帯を、まるで証拠資料を読み込む検事のように見ている由夏に、俺はボソボソと言う。


「長谷川のことは、本当にゴメン。お前に何も言わなかったのは、単純に彼女と連絡を取ってることを、お前が知ったら、いい気分はしないと思ったから。だけど、やましいことはしてないし、もちろんするつもりもなかった。」


「・・・。」


「長谷川から連絡を取り合いたいと言われた時、俺はハッキリと言った。会うことは出来ない、電話かLINEだけだって。だから球場に来てくれた時に話すことはあったけど、それ以外に彼女と会ったのは、最初に彼女が訪ねて来た時と、菅沼さんに引き合わせた時だけだ。信じてくれ。」


懸命に言う俺の言葉には、全く反応せず、ずっと携帯を見ている由夏。諦めて、俺はそんな彼女をしばらく眺めていた。


そして、何分くらい経っただろうか。ようやく顔を上げた由夏は


「『明日から由夏が来るから、連絡は控えてくれ』、ね。」


「・・・。」


「あくまで、私に隠すつもりだったんだ。」


呆れた口調で、そう言われて、俺は何も言えなくなる。


「でも残念だったね。その聡志の意図は、長谷川さんには、伝わらなかったみたいだね」


「えっ?」


「聡志、あんた本当になんにも感じなかった?」


由夏の視線は、相変わらず厳しい。


「見る限り、連絡は、ほぼ一方的に長谷川さんの方から来てるよね。電話も、LINEも。聡志からしてるのは、菅沼さんと彼女を引き合わせる時の打ち合わせくらい。」


「ああ・・・。」


「内容も、別に私が目くじらを立てるようなものは、せいぜいさっきの連絡云々くらいかな。もっともヤバいのは消されてるのかもしれないけど。」


「ちょっと待て、俺は・・・。」


「ま、聡志はそれほどマメじゃないからね。私にいきなり携帯見せろなんて、言われるとも思ってなかったろうし。」


由夏の口調が、少し柔らかくなったような気がする。


「通話も、もちろん何を話してたかなんて、わからないけど、せいぜい毎回5分くらい。愛を語らってたとは思えない、かな?」


「由夏・・・。」


「でも、この頻度は異常だよ。ほぼ毎日。ハッキリ言って私とより、よっぽど多いじゃない。」


由夏の口調が、またキツくなる。


「それは、実は俺も思ってた。でも長い時間じゃなかったし、内容も当たり障りのないものばかりで、拒む理由もなかったから。まぁ菅沼さんとのデート報告まで来たのには、参ったけど・・・。」


俺がそう答えると、由夏は俺の顔をじっと見つめた。
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