愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
「だから、俺も玲さんには、もう身内感覚で接してるから。今回の件でも、情報をもらったり、相談したり、時には愚痴を聞いてもらったこともあった。そうやって、会ってるところを丸山にも見られたんだろうな。アイツにも付き合ってるって、誤解されたからな。」


「そうだったんですか・・・。」


こんなこともあるんだね・・・。


「丸山には、可哀想なことをしたよ。さぞ、悔しかったろうと思う。俺も胸が潰れるくらい辛かったが、あの時は他にどうしようもなかった。だけどアイツを犠牲にした挙げ句、結局今日の結果を招いた。俺は、アイツになんて侘びたらいいかわからない。」


「・・・。」


「岩武は、本当にアイツともう連絡をとってないのか?」


「はい。LINEも未読のままですし、電話も全然繋がらなくなりました。」


「そうか・・・俺があの辞令の対象者に丸山を選んだのは、多分お前が玲さんから聞いている理由の他にもう1つある。」


「えっ?」


「あの辞令を受け取れば、丸山は拒否して会社を辞めるだろうということはわかっていた。いや、丸山に限らず、他の誰を選んだって同じ行動をとっただろう。そいつがデザイナーという職業が好きで、また誇りを持っている限りな。」


「・・・。」


「会社を飛び出したとして、でも俺は丸山なら、どこに行ってもデザイナーとしてやって行ける能力がある。そう思ってたからこそ、俺は丸山を切ったんだ。」


「平賀さん・・・。」


「だが・・・丸山は未だに、デザイナーに復帰した形跡がない。業界にカムバックしたなら、必ず俺達の耳に入るはずだ。なのに・・・俺はデザイナー丸山陽菜を完全に殺してしまったのかもしれない・・・。」


そう言って、唇を噛みしめる平賀さんに


「そんなことありません。陽菜さんは最後に言ってました。必ずデザイナーに返り咲く。返り咲いて平賀さんを見返してみせるって。陽菜さんは絶対に帰って来ます。」


と思わず言ってしまった。その私の言葉に


「そうか、そう言ってたか。なら・・・大丈夫だな。」


と平賀さんは笑った。その笑顔に私はハッとして


「すみません、私、また余計なことを・・・。」


と小声で言うと


「いいんだよ。俺はお前のそう言う正直で真っ直ぐなところに惚れて、ウチの会社に誘ったんだ。」


と笑う平賀さん。けど、すぐに表情を改めると


「だが、こうなっては、それがお前の為だったかどうかはわからんがな。」


なんて言うから


「そんなことありません。私、平賀さんに出会えて、この会社に誘っていただいて、本当によかったと思ってます。嘘じゃありません。」


と必死に言う。


「そうか、なら、よかった・・・。」


その私の言葉に、また笑顔を浮かべた平賀さんは


「ウチの会社は、まだ終わったわけじゃない。岩武、一緒に頑張ろうな。」


と私を見て言った。


「はい。じゃ、失礼します。」


そう言って、頭を下げようとした途端、私は強い力で抱き寄せられた。


(えっ・・・?)


あまりに突然のことで、訳がわからず、頭の中が真っ白になる。でも私は、間違いなく平賀さんの腕の中にいた。


「平賀、さん・・・・。」


動揺する私に


「疲れたよ、由夏。」


平賀さんがポツンと呟く。


ダメ、私、何されちゃってるの?平賀さん、由夏なんて、呼ばないで・・・。


だけど、私は平賀さんを突き放すことが出来ず、固まったよう抱きしめられたままだった・・・。
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