愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
結局、聡志が私を解放したのは、秋の長い夜長が、既に白々と明けようとする頃だった。


そのあと、いつの間にか、微睡んでいた私が、ハッと目を覚ました時には、聡志の姿はなかった。


どこに行ったのだろう・・・ボンヤリとした頭で考えたが、すぐに練習に行ったのだと思い至る。


男性の、スポーツ選手のタフネスぶりに、いささか感心しながら、身を起こした私は、自分が生まれた時の姿のままであることに気付き、他に誰もいないのに、思わずケットを身に纏い、ヨロヨロと立ち上がった。


ふと横の物置台に、メモが残されていることに気付き、手に取ると


『俺が戻るまで、待ってろ。』


と殴り書きのような聡志のメッセージが。もちろんそのつもりだった私は、そのメモにコクンと頷くと、寝室を出た。


まずは、昨夜の余韻が色濃く残る身体を洗い流しに浴室に。聡志が帰って来るまで、このままでいたい気もしたけど、さすがにそうもいかない。


その後は、いろいろなことをこなしながら、聡志の帰りを待った。


聡志が帰って来たのは、午後の3時くらいだった。一段落して、ひと息ついていた私は急いで、玄関に走って、聡志に飛びつこうとしたけど、入って来た聡志の顔があまりにも厳しくて、思わず足が止まる。


「ただいま。」


「おかえり・・・。」


ぎこちなく、自分を迎えた私の横をさっさとすり抜け、聡志は部屋に入って行く。それを見て、私も慌ててあとを追う。


そして、ダイニングテーブルに向かい合って座る。でも、聡志は私を見ないし、私も俯いて、聡志が見られない。流れる沈黙・・・。


「ごめんなさい。」


ようやく、小さい声で、そう言った。


「いつからなんだ?」


「えっ?」


「その男が気になりだしたのは?」


そこで、聡志はようやく私に視線を向ける。


「2週間くらい前から・・・。その人に急に抱きしめられて。その後、すぐにその人にはゴメン、忘れてくれって言われたんだど・・・。」


「忘れるどころか、お前の中で、そいつはどんどん大きくなっていった。演技しなきゃ、俺に甘えられなくなるくらい。」


「聡志、それは・・・。」


「誤魔化しても無駄だ。昨日も言っただろ、何年一緒にいると思ってるんだって。」


そう決めつけられて、私は一瞬言葉に詰まるけど、すぐに


「でも聡志、聞いて。私・・・。」


と言葉を紡ごうとした。だけど


「退職届、ここから郵送しろ。」


と言う聡志に言葉に息を呑む。


「お前を()られるかもしれないとわかっていて、お前を向こうへ帰すほど、俺は呑気でも自信家でもねぇんだよ。」


聡志の口調は厳しかった。
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