愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
プレゼンから帰り、状況や手応えを岡嶋さん、更には平賀さんに報告して、デスクに戻った私に、隣の席の並木さんが、声を掛けて来た。


「お疲れ様。どうだった?」


「あまり厳しいことは言われませんでしたけど、手応えは全くありませんね。なんと言っても、競合がどんなデザイン持ち込んでるか、こちらには全く見えませんからね。」


「それはそうだよね。」


「そちらは、これからですよね?」


「うん。岡嶋さんは自信満々だけど、どうなることやら。」


そう言って、ため息をついた並木さんは、なぜか声をひそめると


「それより今日、仕事終わった後、時間取れない?ちょっと話したいことがあるのよ。」


「ええ、大丈夫ですよ。」


つられて、小声で答える。


「じゃ、よろしく。」


そう言うと、並木さんは席を離れて行った。


結果がどうなるかは、わからないけど、プレゼンが終了したことで、私の中では一段落付いた形になった。


この後も、希を相手にいろんな話や打ち合わせをしたが、つい「後は頼んだよ」的な話しっぷりになってしまっていることに気付いて、内心苦笑い。


どのタイミングで、退職を申し出るか、まだ決めかねているから、改めて気を引き締めなければと思った。


そして夜、私は約束通り、並木さんとアフター5。なんか今日は、賑やかな場所の気分という並木さんの言葉で、海鮮居酒屋へ。


ここは女子だけでも、全然行ける雰囲気で、私達は重宝している。


ビールで乾杯したあと、まずはよもやま話。プレゼンの話も出たけど


「ダメなんじゃない?」


と並木さんはあっさり言うと


「あの人は・・・岡嶋さんは、なんにもわかってないよ。」


とため息をつく。これ以上、この話題を続けるのが気の毒になって、慌てて話題を変えた。


その後は、当たり障りのない話をしていたが、やがて並木さんが形を改めて、私を見た。


「由夏、私、会社辞めることにした。」


「えっ?」


突然の並木さんの言葉に、驚かされる。
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