愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
聡志が開幕一軍入りを逃したことを知ったのは、仕事帰りにスマホで見たネットニュースだった。


すぐにLINEを送ったけど、なかなか既読にならない。まだ練習中なのか、それとも誰かと残念会がてら、食事でもしているのか。そんなことを思いながら帰宅した。


夕飯を食べながら、父親と聡志のことを話した。今回は一軍に入れると思ったけどなぁというお父さんの言葉は、同感だった。


食事が済み、部屋に戻って、LINEを確認すると、既読にはなっていたけど、何の返信もない。変だなと思いながら、私は電話を掛けてみる。


するといつも通り、ツーコール程で聡志が出た。


『すまねぇ。もう少ししたら、こっちから掛けるつもりだったから。』


という聡志の言葉に、まずはホッとしたあと


「でも、残念だったね。今年はイケると思ってたんだけどなぁ。」


あえて明るい口調で言う。


『そりゃ俺もだ。正直、ガクッと力抜けた。でも腐ったらおしまいだからな。一軍に1番近い存在であることは間違いないって、小谷コーチも言ってくれた。チャンスは必ず来ると信じて、明日からやって行くよ。』


それに答える聡志の口調もいつも通りだった。それから、しばらく私達はいろんな話をしていたけど


『すまん、今日はなんか疲れた。この辺で切るな。』


「えっ、どうしたの?大丈夫?」


まだいつもの通話時間の半分くらいで、そんなことを言い出した聡志に、私は心配になって尋ねる。


『ああ。さすがにちょっと凹んでるからな。』


えっ、私の声は活力剤って、いつも言ってるよね?もし凹んでるなら、なんでもっと話そうとしないの・・・?


私が戸惑っていると


『今日は風呂入って寝るわ。明日からまた頑張んねぇといけないからな。由夏もこっちのことはあんまり気にしないで、仕事頑張れよな。じゃ、おやすみ。』


「あ、聡志・・・。」


慌てて声を掛けるけど、聡志はそのまま電話を切ってしまう。


あまりにも違和感ありまくりの聡志の態度に、私はそのまま立ち尽くす。


(聡志、何があったの?どうしちゃったの・・・?)


私は知らなかった。聡志が開幕一軍を逃したことは、昨日の時点でわかっていたことを。そして、それを聡志はとうとう自分から伝えてくれなかったことを。


そんなこと、今までじゃ考えられなかったことなのに・・・。
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