愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
それからは、オフィスでパソコンとにらめっこ。数日後、出来上がった第一稿を、自席で作業中の平賀さんにメールで送信する。


それを見た平賀さんが、私を手招きする。


「どうですか?」


そう尋ねた私に


「やっぱり青か?」


と平賀さん。


「はい。過去の制服を見ても、青あるいは紺。濃淡はありますが、ほとんどに使われてます。青は清潔感があって、それに見る人に落ち着き、安心感を感じさせる色です。着た時の年齢差から来るギャップも、比較的感じにくいと思います。いろんな面で、青は外せないんじゃないでしょうか?」


「同感だ。」


頷いた平賀さんは、自分のパソコン画面を私に向ける。


「私は青を基調にして、平賀さんは青をアクセントに使ってる。そんな感じですね。」


「どっちもありだと思う。これはあくまで第一案だ。もう少し、同時並行で進めてみよう。」


「わかりました。」


私は一礼して席に戻る。


そうこうしている内に、時間は瞬く間に過ぎて行く。


そして当たり前のように、週末は返上。オフィスで平賀さんと2人きりという状況に、実は少しドキマギしてしまったんだけど、お互い、席が離れているし、作業に没頭しているうちに、そんな雑念は吹っ飛んだ。


夕飯は平賀さんにご馳走してもらった。2人で食事なんか、初めてだったけど、ずっと仕事の話ばかりしていた。


聡志、ごめんね。でも心配させるようなことは何もないからね!


翌日の日曜も、朝から作業。


「明日、他のみんなにも見てもらって、俺の案で行くか、岩武の案で行くか、最終決定する。納期は金曜の朝一だから、それでもギリギリのラインだ。いいな。」


「はい。」


いよいよ差し迫って来た。私の中の緊張は高まって行く。


そして、また無言の時間が続く。お昼を食べるのも忘れて、作業をしていると、突然


「すまん、岩武。」


の声が。


「どうしたんですか?」


「ちょっと行き詰まった。30分ばかり、外の空気を吸って来る。」


「わかりました。じゃ、私もお昼調達して来ます。」


「そうしてくれ。」


こうしてオフィスを出た私達は、ビルの出入り口で別れた。私はコンビニに寄って、すぐに戻ったのだが、待てど暮らせど、平賀さんは戻って来ない。心配になって、携帯を鳴らしてみても、応答がなく、留守電になってしまう。


結局、平賀さんから連絡が入ったのは、もう日がとっぷり暮れてしまった頃だった。


『心配掛けてすまん。思わぬ事態になってしまって。今日は戻れそうにない。すまんが適当に切り上げてくれ。あっ、オフィスのカギ締めだけは頼む。』


「なにがあったんですか?」


当然そう尋ねるけど


『明日話す。じゃ、今日はお疲れ。』


「平賀さん!」


だけど、平賀さんは電話を切ってしまう。明日でどっちの案で行くか決めるとか言ってたのに、どういうこと・・・?
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