愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
翌朝、朝が弱い私としては、画期的な早さで出社すると、入社以来の習慣で、今だに出社一番乗りを続けている美優に


「由夏がこんな時間に来るなんて、雪でも降らなきゃいいけど。」


と目を丸くされたが


「とにかく、最後だからね。」


と言うと、取るものもとりあえず、パソコンを立ち上げる。そして、起動するのももどかしく、昨日から考えていた修正を施してみるけど、やっぱりピンと来ない。


(イラストだと、そうでもないんだけど、パターンに起こすと何かが物足りない。何故なんだろう・・・?)


それが自分でも、ハッキリしなくて、焦りが募る。


(焦らないで。まだ、今日1日ある。)


みんながおいおい出社して来る。一応朝の挨拶は交わすけど、ほとんどうわの空で、私は作業に没頭する。


「ねぇ、由夏。」


どのくらい経ったのだろうか。自分を呼ぶ声が聞こえて、私はハッとその声の方を見た。


「そろそろ、お昼にしたら。もう1時だよ。」


美優にそう言われて、私は思わず時計を見る。


「本当だ、全然気が付かなかった。」


「なんか鬼気迫るって感じでやってるから、声掛け辛かったんだけど、さすがに身体に毒かなって思って。」


「ううん、ありがとう。じゃ、とりあえずお昼にするか。みんなは。」


「外出したよ。平賀さんと陽菜さんは本社に行った。井上バイヤーに挨拶しに。」


「そう。陽菜さん、復帰早々、井上さんとバトらなければいいけど。」


と美優と笑い合った後


「じゃ、ちょっとなんか買って来る。」


そう言い残して、私はオフィスを出た。外に出ると強い日差しが容赦なく、照り付けて来る。夏本番はまだ先だけど、日差しはもう春ではない。今日は結構暑くなりそうだ。


歩きながら、フッと気になり、携帯を取り出す。そろそろ聡志の試合が始まってるはずだ。


でも検索してみると「雨天中止」の文字が。


(仙台は雨なんだ。)


天気のギャップに、改めて仙台との距離を感じながら、私は携帯をバッグにしまった。
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