愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
30分程、話をすると、おばさんと加奈は部屋に引き上げるという。


当然、私達に気を遣ってくれてるわけで、ありがたくも申し訳ない。


2人と別れて、今度は最上階にあるバーへ。運良く窓ぎわのカウンター席が取れ、私達は並んで腰掛ける。


「何時までに戻らないといけないの?」


「11時。」


時計を見ると、もう8時を過ぎている。聡志がホテルまで戻る時間を考えると、決して時間があるわけではない。


「桜井は固いよな。」


「えっ?」


「もうちょっと気軽に考えればいいのに。別に付き合うイコール結婚前提ってわけじゃねぇからな。」


そんなことを言い出した聡志に


「加奈は真面目だからね。それに野球選手と中央省庁の官僚が付き合うって、あんまり現実的とは思えないよ。」


と答える私。


「やっぱり釣り合わねぇか?」


「ううん、そういう意味じゃなくて、まず生活リズムが全然合わないじゃん。デート、いつするの?」


「そっか・・・。」


「それに、加奈は家庭に入って、旦那さんを支えるってタイプにはどうやっても見えないし、プロ野球選手の奥さんには向かないよ。」


そう言って私は笑うけど、聡志の表情は固いまま。


「どうしたの?」


気になって聞くと、


「いや、由夏はやっぱりそう思ってくれてるんだと思って。」


とポツリ。


「どういうこと?」


「結婚したら、家庭に入って、俺を支えるって。」


その言葉に、私はビックリして聡志の顔を見ると


「そんなの当たり前じゃん。」


って答えていた。


「当たり前、か・・・。」


「聡志・・・。」


なんだか複雑そうな表情をしている聡志に、私は不安になる。


「いや、俺は幸せ者だと思ってな。だけど、お前にそうしてもらえるかどうかは、結局俺次第。俺がプロ野球選手として、モノにならなきゃ話にならないってことだもんな。」


「大丈夫だよ、聡志なら。」


私はあえて、力強く言った。


「絶対にやれる、私が保証する。聡志ウォッチャーとしては、世界で右に出る者がないこの(わたくし)が。」


その言葉に、聡志がようやく顔をほころばせた。


「由夏・・・ありがとう。なんか、やれる気がして来た。やっぱりお前は俺の活力剤だ。」


「ただし。」


「うん?」


「左に出る人もあんまりいないかもしれないけど。」


「おい!」


そう言って、顔を見合わせた私達は、次に思わず吹き出していた。そしてその後も、私達は時間の許すギリギリまで、語り尽くした。
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