愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
12月早々に改めて、聡志は帰って来た。2年ぶりの帰郷、そして「聡志お帰りなさい会」も2年ぶりの開催。


両家のお母さんと私で、腕によりをかけた料理を、聡志は本当に嬉しそうに、美味しそうに食べてくれた。


ただ少し心配していたのは、アルコールが入って、いい心持ちになった両方のお父さんが


「この際、もうここで、正式に話を決めたらどうだ。」


とか調子に乗って言い出さないか。親への挨拶はもちろん大切なことだけど、物には順番というものがある。なんて言っても、私本人がまだ、聡志から何にも言われてないんだから。


えっ、5歳の時にプロポーズされて、もうOKしてるじゃないって?それはそれで大切な思い出だけど、それとはやっぱり別でしょう。


「帰って来たら、聞いて欲しい話がある。」


って言ったのは聡志の方なんだから、大丈夫だよね?と内心ヒヤヒヤしてたけど、この日は結局、賑やかに過ごしておしまい。私はホッと胸をなでおろした。


翌日から、私は普通に仕事。聡志はいろいろと友達と約束が出来てるみたい。


「2年ぶりで、モテるのはありがたいし、楽しいんだけど、1年目のオフの二の舞だけはしないようにしないと。」


そんなことを言いながら、聡志は忙しくしている。


そんな中でも、聡志が1番嬉しそうにしてたのは、やっぱり高校の野球部の仲間達との集まり。


どうしても、2、3欠ける人は出るけど、今回はほとんど顔を揃えるそうで


「今日ばかりは、ちょっと羽目を外して来る。」


と言って出掛けて行った。


翌日、様子を聞くと


「やっぱり、アイツらといると、時を忘れるなぁ。」


とご満悦。いろんな話をしてくれたが


「でも神には、なんか恩返しをしないとな。」


とポツンと呟いたのが、印象的だった。


と言って、私が蔑ろにされてるわけでは、もちろんない。休みの日には、ちゃんといろんな所に、連れてって貰ってるし、それは心弾むデート。


でも一向に「聞いて欲しい話」を切り出す様子がないのが、やきもきさせられる。


なんだかんだで、トレーニングも再開したみたいだし、忙しいのはわかるけど、まさか忘れちゃってるわけじゃないよね・・・。


実は先走って、職場には、年内いっぱいで退職すると、申告してしまった。


就職してから半年程で、こんなことを言い出すのは、心苦しかったが


「残念だけど、そういうおめでたい話なら、良かったじゃない。短い間だったけど、頑張ってくれてありがとうね。」


ショップマスターは、笑顔で祝福してくれた。


ということなんで、聡志、大丈夫だよ、ね・・・?
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