愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
当時の私達は、受験を間近に控えた高校3年生。私達の関係はクラスメイト、幼なじみ、でもそれだけじゃない。でもそれがハッキリしない・・・。ちょっと仲良くなると、些細なことからまたケンカして、また少し仲良くなって、また・・・そんなことを繰り返していた。


あの頃、23日は祝日で、あの年は土日が絡んで3連休になっていた。世間はクリスマス3連休で盛り上がってたみたいだけど、私達受験生には、無縁の話だった。


そんな大切な時期の私達を放り出して、私達の両親は旅行に行ってしまった。私は1人、家で留守番。それは初めての体験だった。既に18歳だったのに、お恥ずかしい限りなんだけど、私は独りの夜が怖くて、震えていた。そして、ついに耐えきれなくなって、夜の10時過ぎに、聡志にSOSを出した。


「お願いだから、一緒にいて。」


当然、聡志は拒んだ。それがどういう結果を招くかもしれないか、わからないわけじゃないだろって。


もちろんわかっていた。でも怖さには勝てなかった。私の懇願に負けた聡志は、渋々、来てくれた。


「どうなっても知らねぇからな。」


そう言いながら、寒い中、自転車を飛ばして来てくれた聡志が、とにかく嬉しくて、心強くて、私は彼の胸に夢中で飛び込んでいた。


「挑発されてるのかと思った。」


後に聡志は、苦笑いしながら言っていた。


そして、朝を迎えるまで・・・何も起こらなかった。


リビングのソファで寝ていた聡志を起こして


「お陰様で、グッスリ眠れた。」


と爽やかに言ったけど、それは全然嘘。ずっとドキドキしてて、いつ部屋のドアが開いて、聡志が入って来るか、その時はどうしようって、考えてた。


その時は仕方ない、諦めよう。ううん、聡志なら・・・いい。それが私の結論だった。でもその一方で、聡志は私が嫌がることは絶対にしないって、根拠のない確信もあった。


そして


「あんなに忍耐力を使わされたことは、当然なかったし、これからの人生において、多分ねぇよ。」


と言っていた聡志。


「手を伸ばせば、届くような所で、お前が可愛いパジャマ着て、寝てるんだぜ。悪魔が囁かねぇわけねぇじゃん。でも、もしここで負けたら、お前との関係は、きっとここで終わってしまう。それだけは嫌だった。その一心だった。」


と言ってくれた。


人が聞いたら、だから何って言う話かもしれない。でもあの1日、ううん一晩は間違いなく私達にとってのターニングポイントだった。


だって、あの夜、私達はハッキリ気が付いたんだ。お互いにとって、お互いがどういう想いを抱いていて、どういう存在なのかということを・・・。
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