愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
こうして、二人三脚で戦った最初のシーズンを終えた私達には、まだ大切なセレモニーが待っていた。


結婚式を今の地元仙台で挙げるか、それとも生まれ育った神奈川で挙げるか。私達は真剣に悩んだ。結局、やはり神奈川でと決めた時には、既に3月のシーズン開幕は、目前に迫っていた。


式場をゆっくり見て回る余裕など、当然なく、大学時代の友人がホテルに勤めているので、その伝手で式場を抑え、日付を決めた。そして、合間を縫って、神奈川に打ち合わせに帰る日々が始まった。


式の準備は楽しかったけど、でもシーズン中の聡志は、ほとんど参加出来なかったから、ほぼ私が1人でいろんなことを決め、手配しなければならないのは、やはり楽ではなく、時に寂しい思いもさせられた。


それでも、2人のお母さんにも助けられ、なんとか、準備も進み、聡志のシーズン終了直後からは、急ピッチで打ち合わせを重ねた結果、無事に12月中旬、佳き日を迎えられることになった。


当日は、久しぶりにお互いの実家から、別々に出発。既に実家を離れて、約1年。


「お父さん、お母さん、今まで由夏をここまで、育てていただき、ありがとうございました。」


なんて、殊勝なセリフを言うシーンもなく、父の運転で、会場に向かった。


会場に着き、式場スタッフの手で、素敵な花嫁さんに変身させて貰うこと、約2時間。緊張した表情で新郎が登場。


「新婦さん、お綺麗ですね。」


とスタッフに声を掛けられて


「え、えぇ、まぁ・・・。」


と生返事をすると、そそくさと自分の控室へ。相変わらずの照れ屋ぶりで、褒め言葉の1つもくれないのは、予想通りだから、腹も立たない。


そして、いよいよ時間が来た。


「由夏。」


私の前に、お母さんが立つ。


「お母さん、今までいろいろありがとう。お陰様で、由夏は今日、聡志のお嫁さんになります。長い間、お世話になりました。」


そう言った私に


「うん、由夏も身体にだけは気をつけるんだよ。」


「はい。」


私が頷くと、お母さんは、私のベールを下ろしてくれる。


「では、そろそろ参りましょう。」


スタッフから声が掛かり、今度はお父さんのもとへ。


「お父さん、今まで、本当にありがとう。」


そう言って、お父さんの腕を取ると


「ああ。」


お父さんは、私を見ずに、短くそう答えるだけ。でもその目に涙が光っているのを、私はハッキリ見た。


教会の扉が開き、パッと視界が開ける。大勢のゲストが、拍手で迎えてくれる。そして私は、バージンロードをお父さんと一緒に歩く。一歩、また一歩・・・。


やがて、私達は祭壇で待つ、聡志の前に立った。


「聡志、後は・・・頼んだぞ。」


「はい。」


万感の思いを込めたお父さんの言葉に、聡志が頷くと、私はお父さんの手から聡志の手に引き渡された。
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