愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
平賀さんも本来はデザイナ-なんだけど、今の本業は営業マンだよと苦笑い。事実上の会社の責任者として、親会社との折衝や取引先との商談が、平賀さんの一身にのしかかっていることは否定できない。


そうは言っても、デザイナ-としての自分を忘れないように、昨日のように会社に泊まり込んで、やるべきことをやっている姿には、本当に頭が下がる。


そんな平賀さんの精力的な姿を見ると、嫌でも刺激を受けざるを得ない。


平賀さんに直接教えを乞えないのは残念だけど、今の私は他の先輩に付いて、とにかく勉強あるのみ。


美優は事務担当、そしてノムは平賀さんの下で営業の修行。和気あいあいだけど、仕事には厳しい先輩に付いて、覚えなきゃならないことが、本当に山のようにある。


1日はあっと言う間に過ぎて行く。入社して間もない私達は、まだ定時上がりだが、先輩達は、それが当然のように、誰一人席を立つ人はいない。


帰りは同期の2人と、帰りに呑みに行ったり、夕食を共にすることもあるけど、この日はそのまま帰宅の途に。


電車に乗って、携帯を確認すると、やっぱり同じように社会の荒波にさらされている友人、仲間達からメールやLINEが入っている。


みんな今までとは全く違う日々に戸惑い、疲れ、でも頑張っている。そんなことをやり取りしながら、励まし合い、慰め合い、今度の休みに会おうよ、なんてやり取りを交わす。


でも、1週間経ち、2週間経ちすると、そんな連絡も段々少なくなって来る。いろんなことがいっぱいいっぱいになって来て、みんな余裕がなくなって来ているのが、手に取るようにわかる。


学生時代は秀才で鳴らした加奈は


『自分がこんなに要領が悪い人間だとは思わなかった。』


と嘆き節。秀才ばかりが集まる中央省庁のキャリアの中に入ると、あの加奈ですら、そんな思いを抱かされるのかと驚いた。


そして、ドラフト指名直後からキャンプ前半までが嘘のように、めっきり報じられる機会が減った聡志も、仙台で苦闘の日々を送っていた。
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