愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
「どうぞ、前菜代わりのサラダです。」


やがて奥さんがまたテ-ブルにやって来て、私達の前に皿を置いてくれる。


「ドレッシングもマスタ-特製のオリジナル。食べてみ。」


「うん、いただきます。」


聡志に勧めれるまま、私はサラダを口に運ぶ。すると途端に顔がほころんでしまう。


「おいしい。野菜が新鮮だし、このドレッシングが。ヨ-グルトとリンゴの酸味がなんか凄くさっぱり感を引き立てておいしい。」


私がそう言うと、奥さんが驚いたように


「わかる?」


と尋ねる。


「はい、塩分とのバランスが絶妙だと思います。」


と答えると、奥さんは


「ありがとう。」


と嬉しそうに頭を下げる。


「こいつ、料理が大好きで、得意なんです。本当に美味いんですよ、こいつの作った料理。」


「ちょっと聡志・・・。」


自分のことのように、自慢する聡志に恥ずかしくなって、私は止めるけど


「わかるわ。これは主人も腕の振るいがいがあるって、きっと厨房で張り切ってるわよ。じゃ、ごゆっくり。」


そう言って、奥さんはまた厨房へ。


「さすがだな、由夏。」


「そんなことないよ。それより聡志って、そんな人気者だったんだ。」


からかうように言うと


「俺に限らず、Eの選手は仙台市民、いや東北地方ではみんなが応援してくれてる。俺はその上、二刀流なんてちょっと変わったことをやってるから、余計目立つらしくてな。」


とまた照れ臭そうに答える。


「だから、別に自分がスタ-になったなんて、うぬぼれるわけじゃねぇけど、やっぱりどこに行くにしても、ちょっと面倒なことになることが多いのも確かなんだ。その点、この店は幸か不幸か広くないし、お客さんも常連さんが多いから安心なんだ。堀岡さん夫妻も、ずっとウチのチ-ムと選手を応援してくれているし。それになんといっても料理が美味い!」


確かに、ここの料理は期待できそう。改めて見回せば、所狭しと飾られているEの選手のサインが目に入る。名だたる主力選手から若手選手まで、その中に真新しい色紙に書かれた聡志のそれが。


「俺なんか、まだ恐れ多いって言ったんだが、是非にと、おだてられてな・・・。」


私が見ているのに気づいた聡志が、そんなことを言って来る。そうこうしているうちに奥さんがメインディッシュとスープ、ライスを運んで来てくれる。


「仙台といったら、牛タンなんで。ウチの店自慢の牛タンのシチュ-をどうぞ。」


「はい。」


置かれた皿に、フォ-クとナイフを入れ、まずは一口。なにこれ・・・お肉がトロトロ、デミソ-スのおいしさが口いっぱいに広がって・・・。


「おいしい・・・。」


おもわずそう漏らした私に


「だろ?」


と聡志がなぜかドヤ顔、そして奥さんは嬉しそうに微笑んでいた。
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