愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
そう思い至った私は、改めて気合を入れ直して、仕事に向き合った。


聡志が言ってた通り、自分が望んで入った会社、就いた職業なんだもん。全力でぶつからなくちゃ、罰が当たるよね。


かくして私は、連日、打ち合わせやサンプルの修正、更には早くも来春の商品のイメージ作りと、精力的に動き回る陽菜さんに付いて、また少し実際の作業のお手伝いもしている。


何にも知らない頃は、デザイナーは、日がな1日、座ってパソコンをにらみながら、デザインのことを考えるのが仕事だと思っていた。


もちろんそれが一番の仕事ではあるんだけど、それをやるに当たっては、いろんな情報を集め、人の話を聞き、ライバル会社やブランドの動向に目を配り、最終的には自分のデザインを親会社を初めとした取引先に、買ってもらわなくちゃならない。


のほほんとデスクに座ってるだけで、勤まる仕事じゃないことは、痛感した。


「いいデザイナーになるには、とにかく頭を柔軟にして、フットワークを軽くして、マメに暮らして行くことだ。自分の感性やこだわりは必要だけど、それに固執してたら、すぐに行き詰まる。だからこそ、いろんな人に会って話を聞き、雑誌やインターネット、テレビ、あらゆる媒体にアンテナを張る。ライバル社の商品、ブランドには、謙虚な視点を持ち、良いものは貪欲に取り入れる。良い情報、使える情報は絶対に向こうからはやって来ない。向こうからやって来るものなんて、むしろ疑ってかかった方がいいくらいさ。」


就活中に、平賀さんがこんなことを話してくれた。その平賀イズムで鍛えられた陽菜さんは、まさしくその実践者。


「休みの日に、疲れてても一日中、家でゴロゴロしてるなんて、もったいないことしてたら、ダメだよ。」


そう言う陽菜さんに誘われて、この週末は渋谷や六本木を回ることになった。
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