愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
試合が始まった。俺はこの日はベンチに入った。春の陸上部員生活もようやく卒業して、ベンチに入れてもらえる機会が増えて来たのは、プロ野球選手として、階段を1つ上がれたのかなというのは実感がある。


もっともそれが出場機会にあまり結びついてはいない。特にピッチャ-としては、あの4月の初登板以来ご無沙汰。


キャッチャ-としても先発出場はまだなく、また今日のような地元開催の試合ではベンチ入り出来ても、遠征メンバーになぜか選ばれない。


地元神奈川じゃなくても、GやSが本拠地を置く東京遠征のメンバ-に選ばれれば、由夏に会うチャンスも生まれるんだがなぁ。


ベンチに座る俺達の重要な役目は、声を出すこと。ま、野球選手としちゃ、イロハのイだけどな。そしてグラウンドで繰り広げられる1つ1つのプレ-に目を光らせていること。自分の勉強の為、そしてチ-ムの勝利の為に。


更にキャッチャ-としてベンチ入りしてる俺にとっては、ブルペンやベンチ前、あるいは試合に出ているキャッチャ-の準備(キャッチャ-は防具等の装備をつけなくてはならないが、バッタ-やランナ-にある時はそれを外さなくてならない)が整うまで、グラウンドでピッチャ-のボ-ルを受けるという役割もある。


この試合、佐藤先輩は6番ライトで先発出場。一軍でホームランを放った実績もある先輩は、やはり二軍では役者が違うようで、この日は容赦なく、我がチームのピッチャーに痛打を浴びせかけて来た。


先発ピッチャー以下、そんな先輩を筆頭にしたF打線の餌食となり、試合は残念ながら一方的な展開に。


そんな中、終盤の7回に代打で起用され、凡打に終わった俺は、そのままキャッチャーに起用された。


「おい、お前の先輩、なんとかして来い。」


グラウンドに向かう俺に、ベンチから声が飛ぶ。この日の佐藤さんはホームランを含み3安打、5打点と大当たりだった。
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