愛を贈りたいから〜これからもずっと〜
聡志の好投を、私は仕事の合間にネットで確認していた。聡志には、真面目に仕事しろって言われたけど、新監督さんが見に来るって聞いてたし、やっぱり気になっちゃって・・・。


平賀さん、陽菜さん、ごめんなさい。


でも結果は最高!5回をパーフェクトなんて・・・。誰も見てない所で、飛び跳ねちゃった。


すぐに『おめでとう、やったじゃん。』ってLINEしたらすぐに


『おぅ、サンキュー。』


って、素っ気ない返信が。でも今は仕事中で、LINEのやり取りはあんまり出来ないし、夜に電話で話す約束したから。


そして夜。仕事を終えた私は、寄り道もせずに帰宅。夕飯、お風呂も早々に済ませて、部屋で待ち構えていると、あいつからであることを知らせる着信音が響いた。


「もしもし。おめでとう、聡志。」


前置き抜きに、私が改めて祝福すると


『ありがとよ。とにかく、今日は調子良かった。』


「そうなんだ。」


『シーズン終わってから、おせぇよって話なんだけど、本当に調子上がって来てさ。いい時に新監督に見てもらえたよ。投げ終わった後、わざわざ呼ばれて、来年期待してるって、言ってもらった。』


「へぇ、凄いじゃん。ピッチャーとしての練習に専念出来てるのが、よかったのかな?」


『それもあるかもな。でも監督からはキャッチャーとしてもしっかりやれって言われた。』


「そうなの?じゃ二刀流継続ってこと?」


意外な聡志の言葉に私は驚いて聞く。


『そうなるだろうな。報告したら、小谷さんは苦い顔してたけど。』


聡志が入団以来、お世話になってる小谷コーチは、聡志の二刀流に反対みたいだからな。


「じゃ、また大変だね。ても、野崎新監督って、確か現役時代はキャッチャーだよね?」


そう言った私に


『よく知ってるじゃん。名キャッチャーとして鳴らした人だからな。そういう人にそう言ってもらったってことは、やっぱりキャッチャーとしても期待されてることかもな。』


答えた聡志の声は弾んでいた。プロ入りしてから、なかなか結果が出なかった聡志。でも、今日の好投は、あいつがプロでやって行ける力を持っていることをキチンと証明出来たってことだ。


本人にも手応えがあったんだろう。稚気溢れる声で、私に今日のことを報告して来る聡志は、まるでママに褒めてもらいたくてしょうがない幼稚園児のようで。


なんか可愛いって思ってしまったことは、たぶん本人には言わない方が良さそうだ。
< 82 / 330 >

この作品をシェア

pagetop