ただ俺たちは恋をした。

―――勉強してくるっ!


言って夏目は教室を飛び出していった。


居残りタイムの教室に残されたのは俺、一人


・・・と、ラーメンを描いた後の残る紙が一枚。


俺は深くため息をつきながら窓の外に目をやった。


午後3時の微妙な位置の太陽をバックにした3階から延びる空中にできた渡り廊下。


窓越しに人が歩いているのが見えた。


夏目だった。


顔は不気味なほどに笑顔。


そして手には普段なら絶対に持っていなさそうなたくさんの教科書やら参考書やらが抱えられていた。


出て行くときは手ぶらだったのに。


俺はしばらく隣の存在に気がつかなかった。


というより"視界にいれようとしていなかった"とでも言った方がいいのだろう。


俺はあの笑顔だけを見ていたかった。



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