ただ俺たちは恋をした。
俺は落胆し、椅子から滑り落ちそうになっている。


あの笑顔をあの人に向けていたのも少なからず嫌ではあるが、それよりもむしろ、
あの作った笑顔を向けさせたあの人が・・・


胸がズキズキと痛むような感じを二度目だな、なんて冷静に考えながら目を閉じた。


思い出すのは夏目の表情ばかりだった。


自分はこんなにも夏目ばかりを考えるようになっていたのか。


好きになったから?


いや、ちがう。


キスをしようなんて考えたからだ。


あぁ、そうだ。


じゃないと一つ前の考えで落ち着いてしまう。


それは、それだけは嫌だ。


だって一応俺も男だ。


あいつも男だ。


うん、違う。違うんだ。







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