ただ俺たちは恋をした。

キス

あれを思い出さないようにと心を落ち着かせながら目を向けた。


あれから3時間後。


1人で記事を考えろなんて無理なことだとは2時間前、1人にされたときから気付いていた。


今、こんな光景を目の当たりにするとは思わずに。


「夏目・・・」


俺はこんなときなんて言えばいいのかなんて、そんなステータス持ち合わせてなんかいない。


『うっ・・・う゛ぅぇ・・・』


漏れる嗚咽を片耳で聞きながら蝉の鳴き声を聞いていた。


友達がこんなときに蝉の声聞いてるなんて薄情物だとみんなに言われるのは分かっている。


それよりも俺の腕を掴んで離そうとしない涙と鼻水でぼろぼろのコイツに誰か代わりに何か言ってくれ。


俺は人に泣きつかれるのなんて弟以来だ。


それも、遠い昔の話でほとんど覚えてないけれど。


まぁ今は皮肉にも、俺よりでかくなって筋肉もついて、彼女もいる。


俺なんて人並み以下で彼女のひとりもいないというのに。


まぁそんなことはどうでもいいのだが。







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