メーティスの瞳
カップ麺ができるまでの間、透は玲奈の様子を見ていることにした。玲奈は透の視線に全く気付いていない。

変わり者で人使いの荒い玲奈だが、その美貌はギリシャ神話に登場する女神のようだ。その横顔はやはり美しい。透の胸はドキッと音を立てる。

その時、研究所の呼び鈴が鳴り響いた。犬たちが走って玄関まで出迎えに行く。玲奈がようやく顔を上げた。

「何してるの。早く出て」

玲奈にそう言われ、「わかってる!」と透は返事をして玄関に向かう。また村田刑事が事件でも持って来たのかと思っていたが、ドアを開けて訪問者の顔を見た刹那、透の顔が驚きに染まった。

「えっ!?倉木!?」

「久しぶりだな、浜田」

目の前にいたのは、透が医大に通っていた頃の友人の一人である倉木洋一だった。大きなかばんを持って立っている。

「お前がここで働いてるって聞いてさ。本当だったんだな」

研究所を洋一は興味深そうに眺める。久しぶりの再会に透は胸を弾ませ、「せっかくだし色々話そう」と洋一を中に入れた。
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