メーティスの瞳
「これ、妹と旅行に行ったお土産」

「ありがとう!どこに行ったんだ?」

箱に書かれている文字は日本語でも、英語でもない。透が訊ねると、「フィンランド」と洋一は答える。玲奈が口を開いた。

「フィンランドか……。青少年の死亡の三分の一か自殺でその自殺率はEUの平均以上。うつ病への対処が追いついておらず、それが国の課題となっている」

玲奈の口から出た言葉に、洋一は何と返答したらいいかわからないと言った表情を見せる。透はため息をついた。

「あのな!もっとフィンランドって言ったら有名なものがあるだろ!例えば、サンタとかムーミンとか!もっとそういう楽しい話題を言えよ!」

「私は事実を述べただけだが。なら、あんたは日本に初めて来た人に日本が幸せで平和な国だと言うつもり?」

玲奈の冷たい目に透はビクッと肩を震わせる。それ以上は発言を許さないという圧力がそこにはあった。しかし、透は口を開く。

「日本って平和だろ。凶悪犯罪の件数は少ないし、世界も認めるほど治安もいい。お前が夜中にフラフラ出歩いたって事件なんてほぼ起こらないんだから」
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