メーティスの瞳
ニ 悲しみの中
「亡くなったのは、倉木真希(くらきまき)さん。××高校に通う高校三年生か……」

警察に透が連絡すると、すぐに警察官が駆けつけてくれた。その中には村田刑事もいて、透たちの姿を見ると驚いていた。

玲奈はシートのかけられた遺体をまだ見つめている。その目には生者の力が全く感じられない。透は心配になってきた。

「なあ、大丈夫か?あれだったら事情聴取は後でもーーー」

「平気だ。私に構わなくていい」

そう言う玲奈の体は、微かに震えている。透は不思議に思った。玲奈と洋一の妹に接点はない。なぜここまで玲奈がショックを受けるのか。

頭の中に蘇るのは、玲奈が以前家を飛び出して調査に行ってしまった事件のことだ。遺体のそばに同じようにアルファベットの書かれたカードが置かれていた。透は、なぜ玲奈がアルファベットの事件になるとこんなにも変わるのか知りたくなる。

「ちょっといいか?」

遺体を見つめていた玲奈は村田刑事に呼ばれ、リビングを出て行く。透はすぐにドアの前に立ち、二人の会話を聞こうと聞き耳を立てた。
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