つなぐ
高校2年生の春。
やわらかな日差しの中、桜の甘い香りを乗せたそよ風が吹く校舎。それはまさに春の訪れを示しているようだった。
校舎の一角、桜の大木。
『なぁ!この木の下にタイムカプセル埋めようぜ!』
『おぉ!それは名案!』
『この"紙"も入れたい!』
『だね、入れよう入れよう!』
『…じゃあ、これも…』
_あの日の記憶が蘇る。
色褪せていない、鮮やかな色彩に縁取られたまま。
カプセルを埋めようと言い出したのは花園琥珀|《ハナゾノ コハク》
名案だと言ったのは葉山音斗|《ハヤマ オト》。
"紙"を入れたいと言ったのは里塚侑|《サトヅカ ユウ》。
入れようと言ったのは氷川真澄|《ヒカワ マスミ》。
小さな声で最後に「これも…」と言ったのは月野時雨|《ツキノ シグレ》。
こんなことになったのは習い事の帰りだった。
3月の下旬、随分と早く開花した桜の木の下での出来事だった。
_桜を見ると蘇る記憶。
習い事…いや、大会の帰りだったか-そんなことはどうでもよかった。
ただ、あの日のように 5人でもう一度インディアカをやりたい。5人でしか出来ないスポーツをこの5人という最高のメンバーで出来たことがとても楽しかったから。
"中学校に行っても、高校に行ってもやりたいね"
12歳の時に5人で交わした約束はどうしても叶えたかった_
無事進級することが出来た月野、葉山、花園、氷川。
だが里塚は小学校卒業後、大会の後から1度も会っていない。今、彼がどこにいるのかも分からない。行方は誰一人として知らない状況なのだ…。
「ねぇ!!この学校にインディアカ部作ろうよ!」
それは突然のことだった。
進級してから約数週間経った日の昼休みのことだった。
お調子者であざとい性格、小柄で末っ子気質な花園はそう言った。
「…5人じゃないと出来ないと大会出られない…」
昔から口数の少ない、大人しい月野が呟いた。
「日本のある地域では4人制でレクをやっている…って聞いたよ」ほら、と花園がスマートフォンの画面を見せる。
本当だね…と一同があ然としていた。
「創設したら4人でまた練習したいな」
爽やか笑顔で皆のお兄さんポジションを持つ葉山が言った。
「作ったら…侑と会えるかも」
ふぁぁ…と気だるげに欠伸をした氷川が言う。
よし、作るか!と花園が声をあげる。
賛成!頑張ろう!と一同が返し、4人は空高く手を掲げた。
その日の放課後。
「……この件、ご承諾頂けないでしょうか」
葉山は担任の沼崎飛鳥ヌマサキ アスカに相談していた。
横に並ぶ3人も神妙な面持ちで先生を見ていた。
うーん、としばらく唸っていた先生は「分かりました。他の先生方、校長先生や教頭先生とも話し合いをしないことには何とも言えないわね…。結果が出たらすぐに伝えるわ。それでもいいかしら?」と言い、申請書を受け取ってくれた。
ありがとうございます!!と4人は頭を下げた。
職員室を出てよっしゃあ!!と喜ぶ生徒たちを見て青春よねぇ…と微笑む沼崎。
「早く練習したい!!」
「すごく楽しみ!」
わいわいと騒ぎながら校舎を出た一同。
外は夕焼け空が広々と続いていた。
やわらかな日差しの中、桜の甘い香りを乗せたそよ風が吹く校舎。それはまさに春の訪れを示しているようだった。
校舎の一角、桜の大木。
『なぁ!この木の下にタイムカプセル埋めようぜ!』
『おぉ!それは名案!』
『この"紙"も入れたい!』
『だね、入れよう入れよう!』
『…じゃあ、これも…』
_あの日の記憶が蘇る。
色褪せていない、鮮やかな色彩に縁取られたまま。
カプセルを埋めようと言い出したのは花園琥珀|《ハナゾノ コハク》
名案だと言ったのは葉山音斗|《ハヤマ オト》。
"紙"を入れたいと言ったのは里塚侑|《サトヅカ ユウ》。
入れようと言ったのは氷川真澄|《ヒカワ マスミ》。
小さな声で最後に「これも…」と言ったのは月野時雨|《ツキノ シグレ》。
こんなことになったのは習い事の帰りだった。
3月の下旬、随分と早く開花した桜の木の下での出来事だった。
_桜を見ると蘇る記憶。
習い事…いや、大会の帰りだったか-そんなことはどうでもよかった。
ただ、あの日のように 5人でもう一度インディアカをやりたい。5人でしか出来ないスポーツをこの5人という最高のメンバーで出来たことがとても楽しかったから。
"中学校に行っても、高校に行ってもやりたいね"
12歳の時に5人で交わした約束はどうしても叶えたかった_
無事進級することが出来た月野、葉山、花園、氷川。
だが里塚は小学校卒業後、大会の後から1度も会っていない。今、彼がどこにいるのかも分からない。行方は誰一人として知らない状況なのだ…。
「ねぇ!!この学校にインディアカ部作ろうよ!」
それは突然のことだった。
進級してから約数週間経った日の昼休みのことだった。
お調子者であざとい性格、小柄で末っ子気質な花園はそう言った。
「…5人じゃないと出来ないと大会出られない…」
昔から口数の少ない、大人しい月野が呟いた。
「日本のある地域では4人制でレクをやっている…って聞いたよ」ほら、と花園がスマートフォンの画面を見せる。
本当だね…と一同があ然としていた。
「創設したら4人でまた練習したいな」
爽やか笑顔で皆のお兄さんポジションを持つ葉山が言った。
「作ったら…侑と会えるかも」
ふぁぁ…と気だるげに欠伸をした氷川が言う。
よし、作るか!と花園が声をあげる。
賛成!頑張ろう!と一同が返し、4人は空高く手を掲げた。
その日の放課後。
「……この件、ご承諾頂けないでしょうか」
葉山は担任の沼崎飛鳥ヌマサキ アスカに相談していた。
横に並ぶ3人も神妙な面持ちで先生を見ていた。
うーん、としばらく唸っていた先生は「分かりました。他の先生方、校長先生や教頭先生とも話し合いをしないことには何とも言えないわね…。結果が出たらすぐに伝えるわ。それでもいいかしら?」と言い、申請書を受け取ってくれた。
ありがとうございます!!と4人は頭を下げた。
職員室を出てよっしゃあ!!と喜ぶ生徒たちを見て青春よねぇ…と微笑む沼崎。
「早く練習したい!!」
「すごく楽しみ!」
わいわいと騒ぎながら校舎を出た一同。
外は夕焼け空が広々と続いていた。
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