つなぐ
3日後。
帰りのホームルームで4人の名前が呼ばれた。
「月野くん、葉山くん、花園くん、氷川くん。ホームルーム終了後私の元へ来てください。」
話があるとのことだ。恐らく部活のことだろう。
日直のクラスメイトが「ホームルーム終了です。お疲れ様でした!さようなら」と言うと「さようなら」と全員が返し机や椅子の音があちこちで響く。
「とうとう来てしまったか」
「いよいよだ…」
「結果どうなったかな?」
「早く聞きに行こうー!」
先生の元へ行くと…。
「部活動の件ですが……承認されました!おめでとう!」
よっしゃァ!!と盛り上がる4人に更なる朗報が舞い込んだ。「顧問は私が担当することになったわ。よろしくね」と先生は笑った。
ええっ、本当ですか!と葉山が目を丸くする。
学生時代はバレーボール部出身だったという沼崎が適任だとのことと、プレールールがよく似ているため、インディアカ部を任されたと言う話だった。プロの人間がコーチとして入ってくれるまでは彼女が担当するそうだ。
「今日は部室の案内、生徒会に提出する部の予算の決定、早く終われたら練習もしましょうか」
本日の日程はこれでいいかしら?と先生。
賛成派のみ、満場一致である。
葉山に部室の場所を伝えると、「先に行ってて」と言われた。4人は部室までダッシュだ!と階段を駆け上がり向かっていった。
校舎2階の隅っこの部屋-ここがインディアカ部の部室だ。
先生を待つ一同はジャージに着替え、予算案の概算を計算していた。
だが、一向に先生が来る気配がなく、遅いねと時計を見ると既に30分は経過していたのだ。
遅いから練習始めちゃう?などと話していると…
「遅れてごめんね!」
勢いよくドアを開けて先生が入ってきた。
大丈夫ですよ。仕事お疲れ様です先生!と労いの言葉をかける生徒たち。顔を上げ、ジャージ姿に気づくと「用意周到ね、準備が早くて助かるわ」と微笑んだ。
必要な道具の詳細や部共通のジャージ、ユニフォーム、Tシャツなどの経費等も含めた値段を書き漏れのないように書いた概算を先生に確認してもらい、生徒会へ届けに行くことに。
その間にホワイトボードにルールを書いていく。

【ルール】
サーブ、レシーブ、アタックの三段構成が主体で、3回以内に敵陣へボールを返すこと。
【注意点】
片手でボール(羽根)を打たなければならない。
肘より先の体の部位以外にボール(羽根)が触れた場合は反則になる。
1~3打のいずれかにおいてボール(羽根)がネットに触れると4打までが有効打になる。
【その他】
日常的なインディアカは4対4、公式の大会などは5対5で行う。
コートの広さはバドミントンのダブルスと同じ。
ローテーション制で21点(もしくは18点)のラリーポイントで競われる。
※大会によって時間制になることや、サイドアウト制で行うなど違いあり。
ネットの高さは
旧ルール
男子・男女混合→200cm、女子・シニア→185cm
新ルール
男子・男女混合→215cm、女子・シニア→200cm

などが基本ルールだ。
前衛や後衛などは試合開始の時のメンバーのみを決定。いくつかパターンを用意しその内の1つを選び、「しばらくは"これ(前衛→月野・葉山、後衛→花園・氷川)"でいこう」という方針になった。

余った時間は体育館を借りて練習する時間になった。
ジャンケンをして2対2に分け、ルールに沿ってプレー開始(審判は先生がやってくれます)。
右コート:月野、氷川。
左コート:葉山、花園。
先生の笛の合図でサーブを出す。
「行きまーす!」
先攻は右コート、氷川のサーブからだ。
弧を描くように飛んだボールが左コート上空に。
「俺 とるよ〜」
花園が落下点を予測し、レシーブする。
「おーちゃん!」
「はいよ!」
綺麗に上がったレシーブは葉山の打点付近で留まり強烈なアタックが決まる。
ピッ!という得点の入った音が響く。
「やったね」と2人はグータッチを交わす。
サーブ権は得点を取った側へ回ってくるので次は左コートだ。
花園のサーブは無重力空間にあるかのように、空中を飛ぶ。
「琥珀のサーブって取りにくいよねぇ」
氷川がそう言いながらボールを受ける。
掴みどころのないサーブとして現役だった頃も定評があったようだ。
無駄のない動きで上げられたボールが月野へ繋がれる。
「しぐー」
あだ名で名前を呼ばれた月野はこくりと頷いてアタックを決める。
こちらもまた強烈なアタックを決めて、2人無邪気な笑顔で笑っていた。
試合を開始から数十分。
ゲーム終了の笛の音でネット前に整列。
ありがとうございました!と4人は頭を下げる。
「久しぶりにやるとやっぱり楽しくてさー!」
「分かるなぁ」
「またやりたい……」
「賛成!」
片付けをしながら思い思いの感想を口にする。
「片付け終了後、挨拶して部活終わりますからねー!」と先生。
分かりました!と返事をし、てきぱきと進めていく。
汗を拭き、水を飲んで再び整列して先生からの話を聞く。
「初日ながらとてもスムーズだったわね。明日もまた頑張りましょう!」と。
「はい、お疲れ様でした!!」
部活動初日はとても有意義な時間となった。

1人だけ皆と帰る方向が違う花園は、家へ向かって歩いていると見覚えのある顔の人を見つけた。
走ってその人物を追うことに。
「ねぇ!待って……っ!ゆーちゃん!!」
その人物とは里塚侑。現在幼馴染の中で行方不明となっていたあの里塚だ。
「……!?」
聞き覚えがある声だったからか、それとも昔のあだ名で呼ばれたことに驚いたのかは不明だが、彼はびくっと体を揺らして立ち止まった。
「……こ、琥珀!?」
追いついた花園は「そうだよ!覚えててくれたんだね」と言った。
「帰ってきてるなら言ってよ」と続けた。
「…ごめん、あんなあとで皆に見せる面なんて無かった」と目を逸らした里塚。
「学校、どうするの」
「羽向高校に通う予定」
ええっ!?と花園が大きい声で反応した。
「俺らの高校来るの!嘘じゃないよね?!」
「嘘じゃない。あいつらもいるのか」
「うん、いるよ。インディアカ部作ったし。」
にっと笑う花園に「…俺も、参加したらダメか」と聞いてきた里塚。
「そのために、作ったんだよ!」
寧ろ歓迎!と抱きついた。
「いつから来るの」という質問の答えは
「夏休み前日」だった_
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